ネット環境紆余曲折

ウブドで物件を探し始めた時、不動産屋に必ず問い合わせたのはどんなネット回線があるかということだった。我が家にとっては100Mbps程度の光ファイバーは水と電気に次ぐライフラインなのでここは絶対妥協できない。しかしウブドあたりは基本的に農村なので、まだ光回線は中心部と幹線道路沿いにしかないらしいことはインドネシアのNTTというべきTelkom社が提供しているIndiHomeのエリア検索からわかっていた。

ところが不動産屋に聞いてみると実はけっこうな勢いで光回線が普及していて、よほど僻地でなければ新しい物件には既に導入されている可能性が高いという。見て回ったのはもちろん光回線が入っている物件ばかりだ。

最終的に選んだ物件は4軒ほど同時に施工された一角にあり、どれも光回線が入っているという。見に行ったときに住んでいる人たちが言っていたので間違いない。なんの疑問も抱かずに契約、引き渡しとなった。

実際住んでみるとその回線が実に遅い。下りは常時3Mbps、上りはその1/4。話が違うじゃねーか、と部屋に来ているケーブルを見ると確かに光ケーブルのようだ。

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光ケーブル

繋いであるルータを覗いてみるとなんと固定IPではないか。前のオーナーが雇っていた管理人によるとAstinetというサービスなのだが、そのAstinetの情報が通信会社のサイトにあるものの詳しいことが全くわからない。ひどく遅いくせに値段は恐ろしく高い(現地人の収入の半月分)ので一昔前の業務用専用線サービスなのではないか。とにかく早急に対策を講じることにした。

まず不動産屋の担当にネットが遅いからアップグレードしたい、できればIndiHomeを導入したいと伝えたが、Telkomからの回答は我が家はエリア外で拡大の予定はない、ということだった。

インドネシアの通信事業は民営・自由化されているので、Telkom以外の数社に問い合わせをしたが予想通り我が家はサービスエリア外。幸い携帯各社の回線はLTEで時間帯によるが最高30Mbpsぐらい出る。LTEルータを注文する一方、数社の回線をテストしてみることにした。

まず日頃使っているTelkomsel。朝のうちは下り20Mbpsぐらい出るのだが夜には2Mbps程度まで落ちる。かと思うと速い時もある、と不安定だがかなり使える。ドコモのような存在らしいので契約者が多く、みんながYouTubeを観ている時間帯にはパフォーマンスが落ちるのは仕方ない。

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朝のTelkomsel。広告が表示されるほど速い
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夜のTelkomsel。下りが著しく遅くなっている

次に新興勢力のSmartfren。LTEオンリーなので期待できるか、と思ったけどなんと我が家はほぼ圏外でスピードテストすらままならない。ウブドやギャニャールの街に出た際には普通に使えるのだが。却下。

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Smartfren

最後にXL。Telkomselに次ぐ大手でテストの結果も二番手。夜になると遅くなるのもTelkomselと同じなので使い慣れているTelkomselのSIMを買い足してLTEルータに挿すことにした。

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朝のXL
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夜のXL

ここでインドネシアのSIMについて一言。外国人はパスポートの提示でSIMを購入できるのだが、30日以上使い続けるには滞在許可証をキャリアの直営店に持っていって登録しなければならない。悪いことにこの直営店があるのは近くてギャニャール、しかもTelkomselの店舗しかない。XLとSmartfrenはデンパサールまで行かないとだめだ。

ギャニャールに出たついでにSIMを買おうとTelkomsel直営店に行ったところ、3種類あるうちのプリペイドSIMのうち一つ、Simpatiが品切れだという。SIMに種類があるのは知ってたがどう違うかはよくわからない。そのへんの携帯屋でSimpatiを買ってくればここで登録できる、というので近くの店で買って無事登録を済ませた。

日頃使っているSIMはKartuASという商品で、Simpatiとは購入できるプランが微妙に違うがわざわざ別商品にするほどでもないと思う。もともとは棲み分けていた商品だったものが、時代とともにだんだん似てきてしまったということではないか。

新SIMもだがkameとlulunが使っているもう二枚のSIMにもチャージしなければならないので、ネットでカード払いをしようと思ったらほぼ全滅。なぜかアメリカのVISAでは一度だけ成功、インドネシアのカードはどれも取引が拒否された。仕方なくTelkom店舗の近くに行った時に店員に現金を渡してチャージというアナログな方法に落ち着いた。インドネシアだからな。今後はコンビニ払いにするか。

そうしてLTEルータの準備ができたある日の朝、まだ8時過ぎだというのに訪れてきた人がいる。不動産屋の担当から再三の依頼を受けていたTelkomの営業マンで、IndiHome導入のお手伝いに来たという。

その経緯というのがこれまたいかにもなのだが、ある日不動産屋がクライアントの新築物件にいたら「IndiHome入れませんか〜」とその営業マンが現れたのだった。ネットが遅いとkameに文句を言われていた不動産屋、「あんたTelkom?ちょっと話がある」と事情を話したらなんと導入できるというではないか。「でもあんたの営業所ができないって言ったんだけど」「窓口担当はよくわかってないんです」ということで近日中に確認に来るということだったのだ。

確認に来るという話だったけど、営業マンは「もちろん入れられます。ちょうど今夜7時までの入会キャンペーンがあるんですけど」と契約させる気満々だ。話を聞くとネット・固定電話・TVのセットだけど普通のネット単体より安いので即決。一両日中に工事に来て3週間後に開通ということになった。

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光回線の終端にある箱。もともとは業務用か?

その日の午後に別のTelkom係員が現れ、工事をするという。もう来たのか。ルータを設置したのはいいが、WiFiでログインしようとするとエラーが出る。どうせまだ開通しないしまあいいや、と思ったけど一応係員に伝えると何やら営業所と連絡を取りながら小一時間待っている。最終的には何か障害が発生しているので使えるようになったら連絡する、と言って帰っていったが、それからまた一時間ほどしたらルータのランプが全部点灯しているではないか。試みに繋いでみたらちゃんと使えるしスピードテストの結果もほぼ公称値通り。開通は来月のはずだったが?それともこれはテストですぐに切断されるのか?

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IndiHome

紆余曲折の一ヶ月だったけど動くときには一気に動くというところがインドネシアらしい。やればできるのだから侮れない。正式開通までは何があるかわからないが、ひとまずネット環境はなんとかなりそうだ。

今回学んだことは色々あるが、一番大事なのは朝8時以降はちゃんと服を着ておくことだな。

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