免許取得

バリでの生活にはバイクが必須だ。なぜ自動車ではなく二輪車がいいのかというと、道路が狭いうえに奇想天外な動きをするバイクの群れを避けて通るにはかなりの技術を要する。狭い道で立ち往生している外国人観光客の車を何度も目撃して、これは無理だとさっさと諦めた。バリの道路は二輪車に最適化されているのだ。

一応日本の普通免許を持っているのでkameは50ccまでの原動機付自転車の免許は持っている。インドネシアで製造されている小型バイクは100ccクラスが主流なので別の免許が必要だし、そもそもインドネシアは条約に加盟していないので国際免許は正式には通用しない。しかしながら実際には(ということろが実にインドネシアだが)どう見ても中学生、下手すれば小学生ぐらいの地元民が通学に乗っているし、外国人観光客も大勢乗っている。kameも今までは厳密には無免許状態で運転していた。

インドネシアに住まわせてもらっている善良な市民としてはいつまでも無免許というわけにはいかない。調べてたところ地元の警察署で試験を受けて免許を発行してもらえるらしい。このあたりはさすがバリ、よくまとまった情報がネットにあるのだが、ほぼすべてがデンパサール近郊在住者によるものでウブドのあるギャニャール県の情報は見当たらない。警察の手続きなのでだいたい同じだろう、ととりあえず警察に行ってみた。

ギャニャールの警察署はここだ。

守衛のいるゲート前に停まり、ええと、ここでいいんだよな、と地図を確認しようとしたら中から出てきたおっさんが「ポリスか?ここだ」と親切に教えてくれる。中に入ると免許申請の駐車場はこちら、と左に行くように指示する看板が見えた。そっちに行ってバイクを駐めると目の前にfotokopiという看板が。そうだ、パスポートと在留証明書のコピーがいるんだった、とそちらへ向かう。コピー屋のおばさんに免許申請はどっち?と聞くと左の方を指差すのでそちらへ向かう。

大きな建物に入ると受付があったので免許?と聞くとあっちだ、と来た方の建物を指差す。なんか人が少ないと思ったんだよな。一階から入るとすぐ窓口があるのでまた免許?と聞くと上だという。一度道路に出て二階部分の入り口から入り、三階に上がるとようやく免許の受付があった。

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免許申請入り口

受付にいるちょっと怖そうなおばさんに持ってきた書類を差し出すと、KITASカードではなくレターのコピーがいる、それと薬局に行ってこいと言う。KITASカードには住所が書いてないのでレターを要求されることは珍しくないし、医師の診断書がいるということもわかっていたので、ふむふむ、これは想定の範囲内だな、と再度コピー屋へ。薬局どこ?と聞くと漠然と西の方を指す。とりあえずそっちへ向かうと警察の診療所らしき建物があった。入り口付近に座っている制服のおじさんに薬局どこ?と聞くと立ち上がって外の道路を西に行ったところを指差す。それではとてくてく歩くと交差点の向こう側にApotek Herbaという薬局があった。

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薬局

カウンターで免許?と聞くと右へ出て階段を上がったところだという。行ってみると待合室があって何人かの男が待っている。しばらくして番号札があることに気づき、番号を取って待つこと数分。先に来ていた男が呼ばれて隣の部屋に入り、すぐに出てきたところで代わって隣へ。血圧測ったりすると思っていたがやったのは色盲の検査だけ。日本と同じで見えた数字を読み上げるのだが、79とかが出ると少し考えないとインドネシア語が出てこない。健康診断よりも語学テストを受けている気分だ。

25,000ルピアを支払い、次は精神鑑定で下だ、と言われ一度外に出る。出口ではさっきバイクの駐車整理をしていた男がはいこっち、と隣の入り口を指してくれる。見ると足元にはフォルダの束があって2000ルピアと書いてある。そうだ、フォルダも買わなきゃいけないんだっけ、と代金を払って隣へ。

受付に行くと紙を渡され、名前を書くのはわかったが指示が理解できない。たまたまそばにいた男が英語で「人の形を描くんだ」と教えてくれ、なるほどそうか、と適当に描いてみる。持ち時間は3分。お絵かきなんて何年ぶりだろうか。一応合格したらしいので90,000ルピアを支払い、高いなあ、ボラれたかなと思いながら警察署へ戻る。これでようやくスタートラインに立てるところまで来た。

怖いおばさんに書類を渡すと申請用紙とペンを渡され、待合室に行けと言われる。そこでiPhoneで辞書を引きながらなんとか用紙に記入し、おばさんに渡すと見もせずにまた待ってろと言われる。よくわからないところもあったんだけど適当に埋めておいて正解だったようだ。

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申請書

わりとすぐに名前を呼ばれ、筆記試験室へ。PCの前に座らされ、マウスの左右クリックで答えを選ぶのだという説明を受けた。もちろんテストはインドネシア語。ネットで読んだ情報ではGoogle Translateを使えばなんとかなる、ということだったのでiPhoneを出して待機していたらそれはしまえと言われる。ええっ、それじゃできるはずないじゃん、と暗澹としながらヘッドホンをして画面に向かってたらテストがスタートした。

画面に何やら文章が出てくるので一応読んでわからないなりに右か左ボタンをクリック。どんどん文章が出てくるのでうわー、これは無理だ、と思ったら次の画面になってカウントダウンが始まった。さっきのはテストの説明だったようだ。

テストは30問で合格ラインは25点。画面に動画や静止画が表示され、それぞれが正しいか誤りかを答える。例えば右折のアニメーションが出てこれは正しいか、という感じなので難しくはないのだけど、最初の説明を理解していなかったので最初の10問のうち4問を間違えてしまった。でも要領がわかってからは1問を除いて全問正解し、なんとか合格。

次は実技試験だ。下へ行け、と言われ2階まで降りてみるけどそれらしい部屋はない。そのへんの人に聞くとさらに下だというので一階の窓口へ。すると上だというのでもう笑うしかない。3階の怖いおばさんのところへ戻ってどこ?と聞くとそばにいた別の係員が待合室の窓まで引っ張ってくれて、問番小屋の先にある東屋を指してくれる。なるほどそういえばあそこには制服の人がいたな、と思いつつ行ってみるとおっさんが3人ほどいて揚げ物などをつまんでいる。フォルダを渡すと紙に名前を書かされ、待っていろ、と言われる。しばらくしてビブスを渡され、すぐそこの試験場へ。

教官が指示をくれるのだけどわからないので、お手本を見せてくれることになった。教官はヘルメットをしてホンダカブに跨がり、まずコーンの間をS字、続いて8の字を2回、最後にUターンをしてみせる。Uターンのところではコースの外側ギリギリを進み、肩を入れてぐっと曲がるのだ、ということを言っているようだった。

S字と8の字は一応問題なくできたが、Uターンでは足をついてしまい失敗。ハンドルがあまり曲がらないうえ、ブレーキが右ハンドルにしかないのでスピードのコントロールが難しい。2回目はなんとか成功して晴れて合格。

待合室にある銀行の窓口で料金10万ルピアを払い、また待つことしばし。ここからはデータ入力と写真撮影、指紋採取、そして最後に免許証の受け渡しとなるはずだが、待合室にいる人たちは番号札を持っていて時折番号のアナウンスがあるのが気になる。俺は番号ないけどいいんだろうか、と少々不安になるが30分ほど待ったところで名前を呼ばれた。

小部屋に案内され、そこでデータ入力、写真撮影、指紋採取。ここの係員は少し英語ができるので楽なのはいいが、どう見ても申請書に書いたデータのほとんどは無視されている。あれは一体何のために書かせるのか。

また待合室へ。免許証を受け取る人たちの中にはただもらって帰る人と、待合室の隅にある切り抜きジョコウィ大統領と記念写真を取らされている人がいる。後者は初めて免許を取る人たちだろう。俺も撮ってもらえるのかな、と期待していたけど呼ばれて免許を渡された時には忘れていた。

家について気がついたけど通常は免許は5年間有効だけど外国人は一年間。また来年半日かけて同じ手続きするのかと考えるとややウンザリだが、二回目になれば勝手もわかってるしインドネシア語も上達しているはずだ。とりあえず2020年2月にリマインダーをセットした。