味の振れ幅(Warung Mak Beng)

サヌールにあるWarung Mak Bengは揚げた魚、魚のスープ、それにご飯のセットしかないが名店として知られているらしい。いずれ機会があったら食べに行こうと思っていたところ、領事館がサヌールの近くなのでその日は割とすぐに訪れたのだった。

ウブドに移り住んで初めてのデンパサール行きだ。暑いだろうとは思っていたがバスを降りた途端にうだるような高温多湿に打ちのめされた。体調不良のlulunを連れてこなかったのは正解だった。近くでバイクをレンタルし、ちょうどお昼時なのでまずはMak Bengへ。

店があるのはサヌールビーチの本当に目の前。小さな店2軒分のスペースはあるが客でごった返している。しばらく観察するがシステムが良くわからない。店内に小さなデスクがあってその前に並んでいる客がいるのでとりあえず一緒に待ってみる。順番が来たので「ええと、ここで食べたいんだけど」「席に座って」つまり勝手に座って待っていると料理が出てくるらしい。飲み物の注文はその時に訊かれる。デスクは精算用で自己申告制。

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Mak Bengサヌール店の魚定食

混んでいるので仕方なく店の奥の方で風通しが悪いテーブルにつく。出てきたのは魚の素揚げ、アラのスープ、ご飯。相席の地元客を観察しているとご飯にスープをかけたり、スープにご飯を入れたりと食べ方はまちまちだ。なんとなく「正しい食べ方」の存在を想定してしまうとは我ながら修行が足りない。

スープはそこそこ美味いが期待したほど魚の出汁が効いていないし、フライの方はさほど美味い魚を使っていない(バラクーダか?)のでこちらもたいしたことない。スープとサンバルがとても辛いので滝のような汗が出る。

なんかやたら混んでて暑かったという以外はあまり感想らしきものもないMak Bengだった。海の近くに来たのだから美味い海の魚を食べたいというのは人情だが、これならわざわざ来るほどではない。近くにもう二軒魚スープ屋(その1)(その2) があるようなので次回はそちらにしよう、と持ち前の諦めの良さでさっさと頭を切り替えた。

それから数ヶ月、ウブド近くにMak Bengの支店があることを発見した。ウブドから南、Masに向かう道路沿いなので今までに何度も前を通っている。我が家からも割と近い。日頃は魚といえば川魚なので「たいして美味くないけどね、でも一応海の魚だから」と期待値を低くセットしてlulunを誘った。

サヌールの店舗と違って店は広々としている。幹線道路沿いなので団体客にも対応できるようにしてあるのだろうか。その割には店員も暇なようで楽しく談笑しているのが少々心配ではある。

これもサヌール店とは違い、テーブルにメニュー(と言っても裏表一枚だけだが)が置いてあって注文もしやすい。入り口を入って左手の方、池のあるあたりが風通しが良くて涼しいのか、地元客はこのあたりに集まっているようだ。

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Mak Bengウブド店の魚定食

運ばれてきた料理は当たり前だがサヌール店と全く同じ。はいはいこれね、と食べてみるとけっこういける。テーブルの向こうのlulunも「おいしい!」と言っている。あれ?見た目は同じだけど味が違うのか?とやや不審に思いながら食べ進めると、確かに美味い。大味な印象だった揚げ魚も柑橘系の激辛サンバルと合わせるとけっこういける。スープは相変わらず辛いがこちらの方が魚のアラがたっぷり入っている印象だ。

全体的に確かに美味い。でも食べ物としては写真からもわかるようにほぼ同じものだ。この違いは何なんだろう。

kameは食べ物のおいしさというものはそのものの味で決まると思っていたので、ミシュランなどが店の内装や待遇なども評価対象にしていることはにやや不満があった。そりゃ気分良く食べられた方がいいが、無愛想で汚い中華屋だって美味いものは美味い。そのただ美味いだけのものを求めたいのに余計な雑音は排除したいではないか。

でも受け手のコンディションで感じる味が変わるのも間違いない。体調が悪い時やお腹が空いていない時には同じものでも美味しさが感じられなくなるのは普通にあることだ。暑いし混んでるし、しかも面倒な用事を控えて一人で多少は不安を抱えながら食べるものと、気候が良くストレスもない状態で経験を共有できる仲間と一緒に食べるものでは味に差が出るのは不思議ではない。

理由はともかく、サヌールで経験したMak Bengよりウブドの方が高水準なのは喜ばしいことだ。海の魚が食べたくなったら気軽に食べに行ける存在はありがたい。次回も天気が良くてたいした用事もない日に体調の良さそうなlulunを乗せて行くことにしよう。