アメリカ、いやニューヨークに来て良かったことがあるとすれば、それはリチャード・トンプソンを何度も観られたことだ。しかも今回はCity Wineryで恒例の3夜連続オールリクエストショーというファン垂涎ギグ。
City Winery
City Winery
どういう経緯だったか忘れたが、去年の秋に日本でうだうだしていた時にたまたまこの情報が入ってきたのだった。今までは気がついた時には既にソウルドアウトだったのだが、いち早くCity Wineryのサイトに見に行くとまだ席がある。即座にゲットしたのは二晩目、正面最前列の席だ。
Richard Thompson at City Winery
客席
オールリクエストとなると予習のしようもないので、漫然と過ごしているうちに当日がやってきた。Won Dee Siamで腹ごしらえをし、会場についたのは7時半頃。早くから来て食事をしたりワインを飲んでいる客がけっこういる。案内された席は最前列のテーブルとステージの間の隙間とでもいう位置で、座ると左肘がテーブル、右肘がステージの上に置けるぐらい。1mぐらい先にマイクスタンドなので文字通りかぶりつき。席はもちろん狭い。Won Dee Siamよりこっちの方が飛行機だな。
Richard Thompson at City Winery
ステージに置いたワイン(奥はリクエストを混ぜるローディー)
今回のタップのワインはカリフォルニアのプチシラーとローヌ。例によってカリフォルニアの赤は樽香が強く、これもぎりぎりだけどやりすぎている。ジャミーでなかなか力強いワインなのでここが残念。ローヌの方はやや渋いけどなかなか水準は高い。
Richard Thompson at City Winery
リクエスト用紙
リクエストってどうやるのかなあ、と思っていたが、客一組あたり一枚のリクエスト用紙が配られて、それに記入するという方式だった。lulunの目の前、ステージに大きな金属のボウルが置いてあってみんなそこに入れに来る。それを一人しかいないローディーが折りたたんで見えないようにしていく。それぞれの思いが込められた青い短冊がどんどん溜まっていくとちょっとわくわく。kameのリクエストはYou? Me? Us?のBurns Supper。こんなのをリクエストする奴はまずいないだろう。
Richard Thompson at City Winery
リクエスト用紙入れ
8時をちょっと回ったところでリチャードおじさん登場。いつもどおりの黒服にベレー帽、元気そうだ。まずショーの段取りを説明。リクエストは用紙のくじびきのみとし、曲名を叫んでも受け付けないこと。原則引いたくじの曲は(できないものは除き)とりあえずやってみること。似た曲が続くといけないので一度に3〜4枚ずつ引いて順序を決めていくこと。
Richard Thompson at City Winery
リクエストを読むリチャードおじさん
客が変化球を投げてくることも承知の上で、引いた曲は全部やるというのだからすごいなあ。こりゃ相当な自信がないとできないことだ。最初の3枚のうち2枚は「知らない。悪いね。」と言ってパス。「打率低いなあ、昨日の客はこんなことしなかったんだけど」と英国人らしい嫌味もチラリ。
Richard Thompson at City Winery
リチャード・トンプソン
一曲目はBackstreet Slide。エンディングのケルト調のインスト部分は省略するかと思いきや、ギター一本でちゃんと再現してしまう。すごいなあ。これはなかなか渋いリクエストだ。「そういえば昨日はバレンタインだったのにラブソングが一曲もなかった」と言ってやったのがWaltzing's for Dreamers。これまた渋い。フェアポート時代のFarewell, Farewellは「お風呂では歌うけど」人前では初めてだと言う。この調子で行けばかなり楽しみ。
予想された変化球がストライクゾーンに入ったのがSummertime Blues。Blackbirdのリクエストには「Blackbird? なんだっけ?あ、ビートルズか」と言って思い出せない歌詞を適当に補いつつちょっと端折って演奏。
ステージの袖にアシスタントが待機していて、歌詞を思い出せない曲は検索して印刷したものを渡してくれる。便利な世の中になったもんだ。いや、それよりもそれだけ弾ける曲があるのもすごい。さすがにキーはなんだっけ、と困るシーンもいくつかあった。コード進行は手が覚えていても、キーはどうやって覚えるんだろう。
Richard Thompson at City Winery
リチャード・トンプソン
意外なところではDad's Gonna Kill Meもアンチョコを要求したこと。あれ?だってこれけっこうステージでやってるはずなのに?と思ったが、若いころの曲は覚えているけど最近の曲は逆に覚えていないのかもしれない。そのDad's Gonna Kill Meはいつ聴いてもパワフルで会場も拍手喝采。名曲だなあ。反戦ソングなのに野暮じゃないし。
Richard Thompson at City Winery
リチャード・トンプソン
確率論的に当然人気のある曲にはリクエストが集まるわけで、直球ど真ん中的なのも登場する。1952 Vincent Black Lightning、Wall of Death、Beeswing、Withered and Died、Persuasionなんかがその部類に入る。I Misunderstoodはミュートしたリフのイントロで客席から拍手。今日の客はよく知ってる。一方リクエストシートに「Vincent 45」というのがあって、「こんなの知らないぞ。あ、それとも高速版か?」なんて冗談も。後半になると引いた短冊を「これもうやった」と言って捨てるシーンが増えたのでやっぱり名曲のリクエストは多かったようだ。
Richard Thompson at City Winery
リチャード・トンプソン
Bonnie St. Johnstoneは1000 Years of Popular Musicに収録されていた曲。その1000 Years〜をそのうちNYでもやりたい、と言うので一部からまた拍手喝采。ちょっと驚いて嬉しそうにしていたのが印象深い。実現したら是非観に行きたい。
Richard Thompson at City Winery
リチャード・トンプソン
リチャードおじさんはスコットランド系だそうで、Bonnie St. Johnstoneの曲についてけっこう細かく解説してくれる。St. Johnstoneという町は今はPerthという名前になっていて、古い地名が残っているのはフットボールクラブだけだという。知らない人は町の名前を「St. Johnstone, nil」 と感違いする、というのには思わず爆笑。客席で笑っているのは一部で、リチャードおじさんも「nilっていうのゼロのことで、それだけ弱いチームなわけ」とネタをあかさないといけないのはアメリカだから仕方ないか。さすがのkameもリクエストする勇気はなかったが、Yankee Go Homeなんてやったらどういう反応が返ってくるだろうか。
Richard Thompson at City Winery
足元に散らかるリクエスト用紙
たっぷり2時間の演奏の後、2回のアンコールに応えてリチャードおじさん退場。リクエストオンリーのギグなんてそう滅多に観られるもんじゃない。しかも目の前。長生きしてみるもんだ。次の機会にもぜひ行きたい。
セットリストはsetlist.fmで。
コメント
楽しそう
東京でもあります
ほんとだ!
うーん
3人というのは難しい数字なのですね。もし実現したら、娘さん
楽しそう