ペルー:高山病のことなど

ロッキーの山に行くたびに高山病で苦しんでいる lulun。kame も平均よりは高山病になりやすいようだが、lulun よりは軽症で済んでいる。そんな二人なので、一旦はマチュピチュに行くのはやめたほうがいいのではという話も出たほど。それでも、やはり一度は行ってみたい。死ぬまでに自分の目で見て足で歩いてみたいという気持が勝る。

しかし、海抜0mのリマからひとっ飛びで突然標高3300mのクスコに泊まると冗談も誇張も抜きで自分たちに死の危険が迫るのは容易に想像できる。低地から2600〜2900mのところへ行って宿泊するたびに高山病になっている経験から判断して、2800m のオリャンタイタンボ(Ollantaytambo)なら高山病になってもなんとかやり過ごせるのではと考えた。クスコに飛んで、そのまま通り抜けて谷を少し降りてオリャンタイタンボにまず2泊することにした。そして、アグアス・カリエンテスで一泊してマチュピチュを訪れて高度に身体を慣らしてから、クスコに移動する日程を kame が提案してくれたのだ。

とは言え、オリャンタイタンボに泊まっている間宿でふせっている時間の余裕はない。そこでできる限りの対策を講じることにした。過去の経験と今回の対応の備忘録。

高山病の基礎知識

高山病は、高所では空気が薄くなり、酸素不足が原因で現れる症状。特に脳の酸素不足が怖い。血中酸素の低下を少しでも防いで、脳に運ばれるようにするのが大切。

ちなみに、海抜0mの酸素濃度を 100%とすると、1000m で 88%、2000m で 78%、3000m で 68%、4000m で 60%、5000m で 53%、10000m では 26%だそうだ。

症状が出る出ないや、その程度は個人差がかなりある。軽度な症状としては、倦怠感、軽度の頭痛、夜中に頻繁に目が覚める、脈が早くなる、息切れ、頻尿。この程度であれば、現地点より高いところに行かず、できるだけ安静にしていればよい。

これに吐き気や不眠、食欲不振が加わってくるようであれば中度なので要注意。酸素吸入をしたり、高度を下げることを検討したほうがよい。

頭痛が激しくなり、嘔吐、疲労感が増してくると、とにかく低いところへ移動するべし。

怖いのは、高所肺水腫(空咳と安静時の息切れが特徴)、高所脳浮腫(バランス障害、意識障害などが出る)で、死に至る危険がある。

なにはともあれ、早め早めの適切な判断が重要だ。

準備編

酸素を運ぶために欠かすことができないものの一つが、ヘモグロビン。酸素はヘモグロビンと結びついて血液中に取り込まれて運ばれるので、ヘモグロビンが不足していたら話にならない。体内の鉄の3分の2程度がヘモグロビン(鉄+タンパク質)の形で蓄積され、その寿命は3、4ヵ月。つまり、事前に作り溜めが可能。

旅行の前から鉄分豊富な食材をを意識的に多くとるようにした(そしてタンパク質も)。鉄分の多い食材は、肉のレバーや赤身、貝類や青魚、ひじきをはじめとする海藻類、ほうれん草、パセリ、大豆などいろいろある。我が家的に食卓に出しやすい、ケール、パセリ、枝豆、豆腐を旅行の3ヵ月ぐらい前からちょっと増やすのがよいだろう。

抗酸化作用の高いものがよいという記述があったものの、その理由や即効性がわからなかった。しかし、藁をも掴む思いで、毎朝アーモンドバターをいつもより多めに食べて&ルイボスティを飲んでみた。

事前にダイアモックスを処方してもらうことも考えたが、副作用の強い薬はどうも踏み切れずに見送る。代わりに、高山病の予防に有効とされるイブプロフェン Ibuprofen という非ステロイド系鎮痛剤をリマを立つ前から飲み始めて、様子を見ながら6時間おきに服用することにした。イブプロフェンは去年辺りから高山病の発症予防に有効であるのではという話が出ているのだ。

同じく非ステロイド系炎症剤であるアスピリンは、血液サラサラにしてくれるのでこれも高山病にいいという話もある。アスピリンのほうがイブプロフェンよりも抗血小板作用は大きいらしい。「バッファリン 330mg」という(副作用を抑える効果のある)ダイアルミネートが配合されている錠剤の在庫が少量あったので、頭痛を感じたら飲む用に持参した。

そして大切なのが、体調を整えておくこと。今までで一番高山病の症状がひどかったのは、病み上がりで山に行ったときだったのだ。睡眠不足も良くないので、リマでの一泊は早起きだけど睡眠導入剤を利用してぐっすり眠って高所への移動に臨んだ。

直接的な影響はないと思われるが、現地での服装はゆるめなものに。高所に行くと(スナックの袋がパツパツになるように)身体も膨張してしまうので圧迫されて気分が悪くなるのを防ぐのと、腹式呼吸をしやすいように。

現地編

上記のイブプロフェンを飲むのはもちろん、やったほうが良いことややらないほうがいいことなどをできるだけ守る。多くが、酸素の無駄な消費をできるだけ抑えながら、いかにたくさん取り込むか。

水分補給 脱水状態になると血がネバネバになって流れにくくなってしまうので。サラサラによく流れて酸素が運ばれやすくなるように。日頃の倍以上は飲むようにしたほうがよりらしい。

腹式呼吸 ゆっくり&深い腹式呼吸を心がける。酸素をしっかり運ぶため。鼻からすって口から吐く。

まず息を吸い込んで、呼吸を2秒ぐらい止めて胸に圧力をかけるように力を入れてから、ゆっくり口から空気を吐き出すという有圧呼吸法というのが紹介されているのも読んだが、通常の腹式呼吸との効果の違いはよくわからない。

禁酒 お酒を飲むと呼吸が浅くなってしまうだけでなく、アルコールを分解するのに酸素が使われる。

禁煙 ニコチンに血管の収縮作用があるため血液の流れが悪くなる(もともと吸わないけれど情報として)。

禁タンニン タンニンが鉄と結びついてしまい鉄分補給の妨げになるから。タンニンを多く含むのはコーヒー、紅茶、緑茶。ちなみに、最初は「禁カフェイン」だと勘違いをしていたが、カフェインは高山病に効果的という話もある。しかし、多くのものはタンニンとカフェインを両方含む。危うきに近寄らずで飲まないことに。

禁睡眠薬 睡眠薬を飲んで寝ると呼吸が浅くなってしまうらしい。

禁満腹 満腹になると血が胃に集まってしまって、脳に行く分が減ってしまう。そうでなくとも低酸素状態では消化機能が落ちるので食べ過ぎは禁物。とは言え、動くためのエネルギーは必要。炭水化物のようなすぐにエネルギーになるものを食べ、飴などで糖分補給をする。

現地では腹六分目を目標にした(6分を目指したら8分ぐらいで止められるのではという期待)。

禁風呂 熱すぎないシャワーだけにして無駄な酸素を使わない。

その他 激し運動は避け、動くときはスローに。交感神経を出来るだけ刺激しないように冷静におとなしくまったりと過ごすように気をつける。

首を激しくふる動作もいけないらしい。酸素が脳に行きにくくなるのだろうか?

コカ 番外編的だけど、一番有効だったと思われるのがコカ。ただし、コカイン(麻薬)の原料になるので現地(ペルーやボリビア)だけでしか使えない手だ。lulun はできるだけコカ茶で飲むようにして、移動時は葉っぱを口に入れてクチャクチャと。覚醒作用があり、車の中で眠気に襲われた kame が少し噛んだだけで目が覚めた。

結果

コカのおかげだったのかもしれないが、今回の高山病対策が今までで一番功を奏した。山に登ったときに頭痛がした程度で済んだのだ。これで、次からのロッキーも少し楽ができるかも。

いろいろなサイトを参考にさせていただいた中で、わからなくなってしまった URL もあるものの記録が残っていたものは以下のサイト。「お世話になりました」

高山病対策ー富士登山ーはじめての富士山

高山病、その予防と対策

赤血球・ヘモグロビンの働き

貧血の食事 食事療法のすすめ方