Grenada:River Antoine Rum Distillery

評価:5/5点

島の北側にある River Antoine Rum Distillery は、先日訪れた廃墟のラム工場 Grenada:Westerhall Estate (ラム工場跡) とは違い、現在もラムを生産している。北の方のドライブの際に工場見学をしてきた。

木, 2017-02-16 13:28 - River Antoine Distillery煮詰めたサトウキビ汁を柄杓で冷却バットへ流す

iPhone に仕込んだ地図と GPS のおかげで、すぐに工場名の書かれた門を見つけることができた。しかし、門の先には畑が広がっていて、どこに進めばよいのかわからない。とりあえず、建物のある方に向かうと、サトウキビの搾りかすの山と、工場らしき建物と、たくさんの観光客が目に入ってくる。

なんの標識もないので、もしかしたら従業員用の駐車スペース?と思える場所に車を止める。どうやら、どこに止めても問題なかったようだ。このざっくり具合が島の良さだろう。

木, 2017-02-16 13:24 - River Antoine Distilleryサトウキビ汁を煮詰める建物

試飲販売コーナーも気になるが、それ以上に今まで見たこともなかったサトウキビの搾りかすの山や、香りが漂ってくる工場らしき建物の中が気になる。lulu が興奮気味にキョロキョロしながら写真を撮っていると、珍しく kame が地元民らしき人と談笑をしている。どうやら、一人2ドルでガイドツアーをやってもらうことで話がついたらしい。

木, 2017-02-16 13:23 - River Antoine Distilleryサトウキビの搾りかす

このラム工場の従業員は、サトウキビを育てている人たちも含め 80名ほどいるとか。門を入って蒸留施設までの間にあった小屋などに集っていた人たちが、そうなのだろう。ラムの原料となるサトウキビの90%ほどが直営農場で作っているという話だった。

ここでは、今でも 18世紀にやっていたのとほとんど同じ作り方でラムを生産しているそうだ(このラム工場は 1785年創業)。この工場でのラムはサトウキビ汁から直接作るアグリコル製法で作られる。アグリコル製法で生産されるのは世界中のラムのわずか2、3%だとか。ちなみに、ほとんどのラムは砂糖を精製したときにできるモラセスを原料とするインダストリアル製法で作られる。

木, 2017-02-16 13:33 - River Antoine Distillery水車

木, 2017-02-16 13:35 - River Antoine Distillery圧搾を待つサトウキビの束

大きな水車があり、1マイル先の水源から流れてきた水の力で水車を回し、サトウキビを水車の力で絞ってく。束ねたサトウキビを圧搾機に送るベルトコンベアも水圧式。

木, 2017-02-16 13:38 - River Antoine Distillery圧搾機
 木, 2017-02-16 13:37 - River Antoine Distillery圧搾機

絞られたサトウキビ汁は、長く伸びた木製の樋のようなガターの中を流れて、フィルターを通ってから、すぐ横の Boiling House へと入っていく。

木, 2017-02-16 13:39 - River Antoine Distilleryサトウキビ汁が流れるパイプ

一方で、絞り終わったサトウキビのカスは、トロッコで運ばれて日に干され、一部は燃料として燃やされ、一部はコンポストになって畑に帰る。

木, 2017-02-16 13:38 - River Antoine Distilleryサトウキビの搾りかすを運ぶトロッコ

Boiling House にはサトウキビ汁を加熱し濃縮するため釜のようなバットが並んでいる。まずは、一番熱源から遠く、一番大きなバットへと流れ込む。バットは 4-5個並んでいて、段々と熱く小さな方へ移して徐々に加熱していく。竈のすぐ上にある一番小さく一番熱いバットまで移して、ある程度までの甘さに煮詰まると、最後に冷却用バットに移して二日間冷ます。手桶を使って人力で移す作業をしているところを見かけたが、なんという果てしない作業だ。

木, 2017-02-16 13:41 - River Antoine Distilleryサトウキビ汁を煮詰めるバット

冷めたサトウキビ汁は、ポンプでコンクリートのタンクに汲み上げられ、8日間かけて発酵。この工程のところでは、味噌と同じ香りが漂って発酵しているのがわかる。この時点でアルコールはまだ14%だそうだ。

木, 2017-02-16 13:42 - River Antoine Distillery発酵タンク

次は蒸留用の金属のタンクへと移される。以前は樽に入れていたが、木製の樽のメンテは大変なようで、この部分は少々近代的になったようだ。タンクの半量を蒸留器で加熱、蒸気は前述の金属のタンクの中にあるコイルに流れていくようになっている。蒸気がここで冷却されるのと同時に、蒸留を待つサトウキビ汁を加熱するという素晴らしい仕組み。これでラムが完成。元の汁の1/10の量になっているらしい。

木, 2017-02-16 13:43 - River Antoine Distillery蒸留器

そして、アルコール度数の検査。細長いガラスのハイポ計みたいなモノで比重を計る。75%未満だったら再度蒸留に回すそうだ。

木, 2017-02-16 13:49 - River Antoine Distillery検査・貯蔵室

最後はタンクに入れ、手動で瓶詰め。70%以上のアルコールは飛行機で運べないので69%に薄めた(観光客用の)バージョンもあるが、地元民は75%を飲む。ガイドをしてくれたお兄さんは、69%の薄いのなんて飲まないよと言わんばかりの顔をしていた。製造が追いつかないので樽熟成はしないという理由から、River Antoine ではホワイト・ラムしか製造していない。

木, 2017-02-16 15:39 - Rivers Royale Grenadian Rum 69%Rivers Royale Grenadian Rum 69%

見学の後は試飲コーナーへ。ちょうど、クルーズ客と思しきグループと一緒だったのだが、75%や69%のラムを試飲したい希望者はわずかしかいない。ラムパンチ系のものはみんな喜んで飲んでいたけど、そんなものなのか。

木, 2017-02-16 15:39 - Rivers Royale Grenadian Rum Punch(チョコレート)Rivers Royale Grenadian Rum Punch(チョコレート)

観光客用の69%のものと、チョコレートフレーバーのラムパンチを購入。実にスモーキーで独特なラムだ。説明を聞きながら見学できて、とても楽しく価値ある訪問になった。購入できなかった 75%のラムを運転手の kame に味あわせてあげれなかったのだけが心残りだ。