The End of Americaを知ったのはCity Wineryの駐車場でやる夏の火曜日ライブだったから、もう4年近く前のことだ。その時はEilen Jewellの前座だったのでkameは間に合わなかったのだが、lulunによるとけっこう良かったらしい。
それ以来気にはしていたのだが、フィラデルフィアが本拠地なのでなかなか近くに来てくれない。何度かニアミスもあったりしたが、ついにブルックリンにあるJalopy Theaterというところに出るということがわかった。今回はSpuyten Duyvilというバンドの前座だ。
調べてみるとJalopy Theaterはフォーク系の極小クラブで、写真を見ると学校か教会みたいな木の椅子が5列ほど並んでいるだけの模様。これはいいぞ。
できの悪いウェブサイトでチケットを買おうとしたらショッピングカートが壊れている。そのうち直るだろ、と一週間ぐらい前に再度トライしたらまだ壊れてるのでメールしたら翌日お礼のメールが来た。ということは誰も気がついてなかったのだろうか。
ようやくチケットを手に入れ、雨模様の土曜日の夕方に地下鉄とバスを乗り継いで現地へ。中に入ると細長いバーがあって壁にギターやウクレレが多数掛けてある。ここは音楽教室もやっているらしい。
その向こうにカーテンがあり、その隙間からサウンドチェックをしているThe End of Americaが見える。バーで受付をしたらリストの一番上に自分の名前が見えた。やっぱり一番乗りだったみたい。
8時を少し回ってようやくサウンドチェックが終わり、会場に入る。3列目の席をゲットしたのだが、後から来た人たちが先に入ったとlulunはご不満。望遠レンズがいらないぐらい近いんだからいいだろうに。
ステージに上がったおっさんがThe End of Americaを紹介する。クラブの人かと思いきや、彼がSpuyten Duyvilのリーダー格のMark Millerという人らしい。知的で温かく優しそうなおじさんだ。彼の英語はわかりやすい、とlulunにも好評。
The End of America at Jalopy Theater
The End of AmericaはJames Downes(左)、Brendon Thomas(中央)、Trevor Leonard(右)というトリオで、3人でギターとバンジョーを弾きながら歌うというスタイル。CS&Nを彷彿とさせる美しいハーモニーが売りだ。最近出たアルバムで予習していたので知っている曲が多いのは嬉しい。
The End of America at Jalopy Theater
3人ともピュアな声質で、唯一Brendonの声がやや個性がある。歌うパートも固定していないようで誰がどの声なのかわかりにくい。しかしその分ハーモニーが本当に見事。スタジオよりもライブの方が数段いい。マイクからの離れ方も絶妙。
曲の合間にはチューニングしながら3人ともわりと喋る。なにしろEnd of Americaというバンド名なので「二ヶ月前にできたのか?」と訊かれる、と苦笑していた。
The End of America at Jalopy Theater
楽器はほぼ固定だけどたまに交換することもある。ただしバンジョーはBrandonだけ。
途中の曲で淀みなくThe Only Living Boy in New Yorkへと流れる。うーむ、やっぱりいい曲を歌わせるとさらにいい。「今度サイモン&ガーファンクルのEPやろうか?」と言っていたので期待できる。その後にやったオリジナルのEvelineはまだレコーディングしていない曲だそうだが、ポール・サイモンに負けないぐらいいい曲だ。
The End of America at Jalopy Theater
これで最後、という曲をやったらステージにSpuytenのマークが上がって「なに?もう一曲?イエー」と親切なところを見せる。そこで3人がマイクなしで歌ったEmpty Seaが最高。鳥肌ものだ。
The End of America at Jalopy Theater
いいバンドだなあ。ビッグになる前に近くで見られて良かった。
Spuytenは女性ボーカル、4弦ドブロ(?)、ギター+フィドル、ハープ、ドラムズ、ベースという編成で、米国版Fairport Conventionといったところか。ギターが妙に若いがそれ以外は年寄りなので、だからこの客層なのか、とlulunが納得している。
Spuyten Duyvil at Jalopy Theater
曲はブルースっぽいトラッドが多くて、まさにアメリカのルーツミュージックの一端を掘り下げている人たちという印象だ。知っていた曲は最初のLet it rainだけで、これは長く未完成だったけど「こういう時代なので」選挙後に書き上げた、とマークは言う。The End of Americaもステージに上げてみんなで歌う。これはラストにとっておくべきでは。
Spuyten Duyvil at Jalopy Theater
ギターの若者は痩せて長いカーリーヘアで昔のリチャード・トンプソンみたいだな、と思ったのも束の間で、いかんともしがたいほどギターが下手くそ。いくらなんでもNYでこういう音楽をやりたい人がいないとは思えないので縁故採用に違いない。
Spuyten Duyvil at Jalopy Theater
Spuyten Duyvilも楽しそうで悪くはないんだけどやや単調でThe End of Americaの実力が際立った晩だった。4月にはBrooklyn Folk FestivalもあるのでNYCのフォークシーンの様子を見に行ってもいいか。