ヨーロッパに来て一週間になるkameはさすがに時差ボケも治ったようだが、lulunは疲れも出たのか8時までぐっすりお休み。フランスの田舎では電車はとにかく滅多に来ないという印象があるが、ボーヌ行きの電車は20分おきぐらいにあるので時間の心配は不要なのが嬉しい。
カフェで軽い朝食後、9時半の電車に乗れそうなので急いで駅に向う。駅舎の中の窓口らしきところで切符を買おうとするが、売り場は外だと言われる。別の新しい建物にリヨン駅と同じようなカウンターがあったのでそこだろうと思って行くと、今度はカフェの隣だと言われる。切符売り場は狭い通路を入ったところに隠れるようにしてあった。ようやく切符を購入してホームへ。
グルノーブル行きの電車はブドウ畑や牧草地の中を走り、ワインでおなじみの地名のついた駅をいくつも通過する。右手に連なる低い丘がブルゴーニュの名だたるブドウ畑があるところだ。30分ほどでボーヌに到着。フランスの田舎によくある小さな駅だ。駅前からまっすぐ西に向う道を歩いて旧市街を目指す。途中のパン屋にパン屋のステンドグラスを発見。
城壁の内側はこじんまりとした静かな街だ。どんよりとした月曜日の午前中なので人影は少ない。観光客も同じ電車で到着した数人だけ。スイスに近くなったせいか、町並みそのものはスイスの街に似た雰囲気で落ち着く。
しばらく街をぶらぶら。さすがにワイン屋が多く目につく。小さな広場がいくつもあり、ディジョン同様街の中心というべき存在がないのが不思議。一応観光局に顔を出してから、雨が降りそうなので今回の唯一の観光をすべくHôtel de Dieuへ。14〜15世紀にブルゴーニュ公の宰相だったニコラ・ロラン(Nicolas Rolin)が作った病院だ。ロランはファン・アイクの絵に出てくる人として有名だ。彼の肖像画は色々あるようだが、どれを見ても一目で彼だとわかる。
切符売り場へ行くと、Hôtel de Dieuと二つの博物館に入れる共通券があったのでそちらを購入。どうせワイン博物館には行くつもりだったのでちょうど良い。
中庭に入ると写真で見た通りのブルゴーニュ風の建物が見える。半分は修復中だが向こう側はじっくり見える。ガーゴイルや小さな塔なども芸が細かい。
メインの病室部分も梁や天井に色々な細工が見える。
Hôtel de Dieu、ずらりと並んだベッド
Hôtel de Dieuの厨房
最もlulunとkameの興味を引いたのはやはり厨房。機械仕掛けのロースターや給湯設備など驚くべき充実ぶりだ。
Hôtel de Dieuを出ると朝とは見違えるほど観光客が増えている。確かに団体がぞろぞろと入ってきていたが、なるほどここは観光地だ、と今更ながら気づく。ちょっと賑やかになった街をしばらくうろつく。お菓子屋においしそうなマカロンを発見。
しばらくしたらお昼の時間になったので一応第二候補に挙げていたLe Gourmandinも覗いてからMa Cuisineへ。食べている間、雨が降ったり止んだりする。Ma Cuisineを出るとまた雨になるのでMusée du Vinへ。路地を入った目立たないところにひっそりと隠れるようにしてある。
ブルゴーニュ公の居館だったという古い屋敷の一部が博物館になっている。中に入るとブルゴーニュのワイン造りの起源から始まり、様々な農具や人々の生活まで幅広く扱っていて実に面白い。日本酒の酒蔵の展示はいくつも見たが、ワイン造りの工程を学ぶのは初めて。樽作りのビデオなんか最高だ。興味のある題材の展示は熱心に見るlulunとkameだが、ここもたっぷり時間をかけて色々と勉強した。
展示のある建物以外も古くて立派だ。その一つのカビ臭い倉庫の中には巨大な圧搾機などが置かれている。
もう少しだけ街をぶらぶら。さすがに連日のお出かけで疲れているので教会の前で小休止。
また空模様が怪しくなってきたのでそろそろワインを、と予習してあったMarché aux vinsへ。テイスティングができる店は色々あるし、周辺のシャトーを回るツアーなどもあるが、初めてなのでできるだけ色々な種類を飲みたい。
Hôel de Dieuの隣の古そうな建物にMarché aux vinsはある。なんでも13〜15世紀の教会の建物を使っているらしい。通りの向い、同じくHôtel de Dieuに隣接した修道院跡にもカーヴがある。
入口で10ユーロを払い、テイスティングの説明を受ける。15種類のワインが飲めること、樽の上に瓶が置いてあること、出口にソムリエがいて質問できること、制限時間が確か90分のこと、一方通行で逆戻りはできないこと、テイスティングに使う器はもらえること。ふむふむ、と聞いて地下に降りる。
地下はいかにも古いカーヴで、確かに教会だったらしい痕跡がある。中には樽がずらり。
テイスティングはまず白を3種。Château de Marsannay(11.40ユーロ)はややフルーティで食事に使えそう。
Pouilly-Fuissé(2004年、14.20ユーロ)はあまり香りがないが、その分口の中で感じる香りがある。好みの分かれるところ。
Meursault(99年、23ユーロ)はドライでやや酸味がある。料理によっては可。
続いて赤。Chorey-Les-Beaune(2004年、13.80ユーロ)は軽くて色も薄い。でも渋みがあって樽香もある。
Ladoix Côte de Beaune(2005年、16.20ユーロ)は色はやや濃く、渋みがなくそのかわりに酸味がある。
テイスティングしながら気に入ったワインがあればラックから取って行くというシステムだが、出口にも一揃いあるのであとで気が変わっても大丈夫。
見覚えのあるラベルのHospices de Dijon BeauneはHôtel de Dieuの領地で作っていたものらしい。薄めだがスパイシーでドライな印象。98年、20ユーロ。
Monthelie(2001年、13ユーロ)はバランスが良く、のどごしに渋みを感じるがわりと好みだ。
ここで地下から一階に移動。確かに教会らしいホールにさらにワインが置いてある。
Savigny-Les-Beaune(99年、18.50ユーロ)は特長無し。
Aloxe-Corton(2004年、18ユーロ)も特長無し。それとももう味が判らなくなってきたのか。
Nuits-Saint-Georges Premier Cru Les Porets St Georges
次は1er cruだ。Nuits-Saint-Georges Premier Cru Les Porets St Georges(2004年、34.80ユーロ)も残念ながら特長無し。
Pommard(2000年、27ユーロ)は口に含んだ時に甘味と香りを感じる。さっぱりした印象。
Gevrey-Chambertin(2001年、23ユーロ)はさらに甘味があって軽い。
Volnay Premier Cru Clos des Chênes
ここから続けて1er cru。Volnay Premier Cru Clos des Chênes(2001年、28.40ユーロ)は口に含むと唇に刺激を感じる。濃度が高い。
Beaune Grèves Premier Cru(2000年、24ユーロ)は軽やかで甘味があり香りが良い。lulunは気に入ったようだ。
Corton Grand Cru Les Languettes
そして満を持してgrand cru。Corton Grand Cru Les Languettes(2000年、39ユーロ)も濃度が高く、バランスが良い。だがバランスが良すぎて特長がない。
結局買って帰りたいほどのワインはなかった。この店がセレクトしたワインが合わないのかもしれないので、一度時間をかけてシャトーまで行って飲んでみたい。あるいはブルゴーニュの微妙な味わいは好みでないのか。一度ボルドーに行かなければ。
ほろ酔い加減で店を出るとさらに雲行きが怪しい。さすがに疲れも出てきたので早めにホテルに戻って身体を休めてから夕食に備えることとする。駅に向って歩きながらふと視線を感じると二階の窓から例のおじさんが顔を出している。
帰りの電車は二両編成の通勤用車両。だが座席に電源が付いている。SNCFもなかなかやるではないか。夕方のせいかどの駅でもけっこう乗り降りがあるのが意外。それなりに人口もいて一つの生活圏を形成しているのがわかる。ディジョンに着いたら学生とおぼしき若者が大勢ホームに向って歩いていた。
ホテルに帰ってちょっと休憩してからStéphane Derbordへ。
遅くなってからすっかり静かになった街をてくてく歩いて帰る。雨に濡れた夜の街もなかなか良い。まあこの後間もなく土砂降りになるのだが。