2012年の夏は例年に比べて野外コンサートのラインナップが不作だった。なんとしても行きたい、というほどでもないうえに悪天候も重なり、結局行ったのはLowdown Hudson Blues Festivalのバディ・ガイだけ。City Wineryの裏でやるフリーコンサート、Hudson Square Seriesも、去年はHolmes BrothersやWood Brothersが出ていたのだが今年は目立ったショーがない。
そのCity Wineryでのシリーズ最終回にはPoundcakeが出る。知らなかったのだがPoundcakeとはTeddy Thompsonが趣味でやっているカバーバンドだそうだ。テディ・トンプソンはあのリチャード・トンプソンの息子で、ソロアーティストとしてもそこそこ成功している。お父ちゃんと一緒にPersuasionを歌ったのをTown Hallで観たことはあったが、謎のカバーバンドのテディ・トンプソンがどんな音楽をやるのか興味があった。
例によって火曜日の夕方、lulunと現地集合。仕事が終わってから行くと今まではもう演奏が始まっていたのだが、今回は近づいても静かなのであれ?と思ったが、どうやらショーはあるらしい。入り口の係員によると6時頃からだというのでちょうどいいタイミングだ。今までと比べると観客がちょっと少ない。やはり地味なバンドだからか、それとも余所者だからか。ステージにはコンパクトなドラムセットとウッドベースが見える。セッティングを見る限り3人編成のシンプルなバンドのようだ。
Poundcake at City Winery
Poundcake
6時を回ったあたりで裏手からギターを持ったテディ・トンプソンが登場。あと数人のおっさんも出てきたのだが楽器を手にしていないので誰がミュージシャンなのかわからない。演奏を始めるのかと思ったらそのへんでビールを飲みながらだべっている。このへんの緩さが遊びのバンドらしいところだ。
Poundcake at City Winery
Teddy Thompson
ようやく3人がステージに上ってチューニングを始めるが、セットリストに混乱があってテディ・トンプソンはチューニングを間違える。早速やってくれたな、と思っていると1曲目はSummertime Blues。The Whoではなくてエディ・コクランのバージョンなのでお父ちゃんと同じだ。
Poundcake at City Winery
Jeff Hill
どんな音楽をやるのかと思っていたが、基本的に50〜60年代のロックンロールとカントリー。わかったところでバディ・ホリー、ジーン・ヴィンセント、ビーチ・ボーイズあたり。It's So EasyやThat'll Be The Dayがバディ・ホリーだとは知らなかった。へえ、若いのにこんなのばっかりやるんだ、とちょっと意外だけど本人たちも楽しそうだし観客も喜んでいる。観客はやはりリチャード・トンプソンのファンが多いのかけっこう年齢層が高めだ。ステージ前で踊っている婆さんがやや目障り。
Poundcake at City Winery
Ethan Eubanks
多少冗談を交えつつ、またもや曲順を間違えたり、アンチョコを見ながらなのに歌詞を間違えたりと相変わらず緩い。もちろんテディ・トンプソンがフロントマンなのだが、ベースのJeff HillとドラムスのEthan Eubanksもなかなかいい声をしていてハーモニーも聴き応えがある。そのうちテディを追い出して二人で独立してやるんだ、なんていう冗談も出てくる。
最近CDも作ったけど17枚しか持ってきてない、1枚いくらだっけ?とセールストークもまるでやる気ない。見たところいかにも手作り。係員がCDを持って客席をうろつき、幸い全部売り切った。17枚を売り切らないんじゃ格好がつかないからちょっと安心したが、売れ残ったらそれはそれでPoundcakeらしくて好ましい。
Poundcake at City Winery
Poundcake
最後の曲になって「あ?、もう終わり?」とテディは相変わらずセットリストを把握していない。「えっと、じゃこれやって、引っ込んでからまた出てくるから、拍手よろしく」と予定調和のアンコールも冗談にする。また遊びながら2曲ほどやって終了。
テディ・トンプソンはそこそこの力量だし、ベースとドラムスの腕も確かだ。テディはリンダ・トンプソンの息子だけあっていい声をしているので、ちょっととらえどころのないソングライティングがもう少しなんとかなればかなり売れそうな気がするんだけどな。機会があったら本気のテディのライブを観てみたいものだ。